母の遺伝

実家に住んでいた時のことだ。

 

長期休みかなにかで一日中自由にできることが嬉しくて、普段しないことをしようと思い立った私は少し早めのお風呂に入ることにした。

 

当時の我が家はボタンを回し押ししてガスに火をつけ、よくわからんハンドルをグルグルと回しまくるとようやくガスが安定するという古臭い仕様のお風呂。

 

ボコンボコン!とかボ!ボ!ボボボボボ!!と爆発寸前のような音を出すので、ビビりな私はいつも「ガス爆発しませんように…」と祈りながら着火するか、2番目以降に入ることにしていた。

 

だがその日はまだ夕方とも言えないくらい早い時間だったので当然私が一番。

ガスをつけることは嫌だが、せっかく一番風呂に入れるのだから仕方ないと思いつつバスルームに入った時。

 

ジャリッ

 

足元が砂っぽいことに気づいた。

 

誰か靴でも洗ったのかしら?とさして気に留めずにもう一歩進むと

 

ジャリッ

 

流石に妙だと思って足元を見たら白い砂利のようなものが散らばっている。

 

これは一体…?

 

ガラスでも割ったんだろうか。

いや、窓も電気も大丈夫だ。

じゃあこれはなに??

 

不可思議な現象に私は怖くなり、急いで母のもとに走っていって事の次第を報告。

 

すると思わぬ返事がきた。

 

「なんか急に怖くなっちゃってね〜…塩撒いたのよ」

 

犯人は母だった。

 

私は私でよくわからん白い砂が怖かったし、母は母でお化けの気配でも感じたんだがなんだかわからんが怖がって塩まで撒く始末。

 

結局そんなことを言われたら益々怖くなったので一番風呂は父(幸運とパワーの塊みたいな人)に譲り、2番目に入ることになった。

 

先に父が入ったならもしお化けがいても退散したはずだ。これで安心♪

 

とのんびり湯に浸かってお風呂からあがり、リビングに行った時に父が私の足をじっと見て突然こんな事を言い出した。

 

「そのムチみたいな痣、なに?」

 

…えっ…!?

ムチ?

ムチってあの女王様か騎手が持ってるやつ?

なんで?お化けの仕業!?

 

と内心パニックになりつつ足をくまなく確認したところ、父の言う"ムチの痣"を見つけた。

 

セルライトやないかい」

 

無駄にビビって損をした。

父は「そうか、ワハハ」と笑っているし、まぁ怖いものじゃなくて良かった良かった!

 

…でもね、もうひとつ不思議なものを見つけたの。

 

私の部屋の天井。

脚立が無いと大人でも届かないその場所に…

 

 

赤ちゃんの手形が。

 

 

 

作成者 この記事を書いている私の背中で突然「あぃっっっ!!!」と雄叫びをあげた子の声にビビって心臓バクバクのあかね