うっかり口が滑りかけたクリスマスの夜

クリスマスと言えばプレゼント。

プレゼントと言えばサンタクロースである。

しかし私のところにサンタさんが来てくれていたのはもう遥か遠い昔のことだ。

気持ち的にはもう何億年経ったかな~というくらい記憶の彼方にいるので忘れていた。

なので小さい子がクリスマスプレゼントの話をしてくれたとき、重大な罪を犯すところだった。

 

危うくサンタさんの正体をバラすところだったのだ。

 

これはもはや犯罪だ。なんということをしようとしていたのか。

せっかく嬉しそうにプレゼントを見せてくれたのに、夢をぶち壊してしまうところだった。

 

私が口を滑らせるすんでの所でその子から「サンタさんに貰ったんだ」という言葉が出てきたので、そこでようやく

そうだ!子供達の世界にはサンタさんがいるんだ!

と思い出したのである。

何も考えずに喋っていたので会話の前後でおかしなことを言ったりしていないだろうなと慌てたが、その後その子には特に変化が無かったので大丈夫だ。

 

それにしても冷や汗をかいた。

本物のサンタさんだと思って喜んでいたのに、本当はサンタさんの格好をした両親だなんて言われたらそらショックだろう。

 

ちなみに私はショックだった。

当時すでに小学6年生だったのにも関わらず、どこかでまだサンタさんの存在を信じていたのだ。

しかしクリスマス当日に父から「サンタはパパ達だよ」と告げられてエラいしょげかえったことを覚えている。

 

プレゼントは嬉しいが、サンタさんという夢のある存在を否定されたら悲しいもんだ。

そして「サンタさんのようなファンタジー要素が嘘だとしたら・・・まさか魔法とかもこの世に無いのかな・・・!?」などと次々に疑問を抱き始めて、私の世界からファンタジーは消えてしまった。

だが私はその真実と共に「なるほど、だから某ネズミちゃんの国では大人達が夢を見せてくれるんだな~感謝感謝。」などとドライな事も思った小6の冬。

 

大人がサンタさんに分して子供を喜ばせる為に演じていると思うと今ではほっこりするが、信じていた子供からしたらやはり本当にいて欲しかったわけだ。

子供達の持つそうしたロマンは我々大人が大事にしてあげないといけないなと思う。

 

そうそう、信じていた頃のエピソードとしてかわいいものもある。

クリスマスが近づいている頃にショッピングセンターに連れられたとき、沢山のおもちゃが所狭しと並んでいるのを見てテンションが上がった齢4歳頃の私。

どこかにサンタさんが買いに来ているはず!」と思い、父や母や姉が歩いている姿を横目に勝手に歩き回って結果迷子になったのだ。

 

当時からしたらものすごく大きなお店の中で必死にあちこち探して歩き回り、おもちゃには一瞥もくれずにおじさんの顔をのぞき込むという怪しい子供と化していたわけだ。

心の中ではドキドキしながら「サンタさんはいるはず!どこだー!」と一目散に駆け回っていたのだが、あなたのサンタさんは今頃迷子になったあなたを探しまわっていることだろうよ・・・とツッコみたい。

 

そんなピュアな気持ちも忘れ去って今回夢をぶち壊しかけたわけだが、その後大人になった私がサンタさんになったこともある。

その時はプレゼントした相手からLINEで「サンタさんが来たのよ!嬉しい!

と大喜びのメッセージが来た。

素直に喜んで貰えるととても嬉しいもんだ。

 

あ、相手は母である。

たまにはこういうのも良かろうと思って父母の枕元にコッソリ置いてきたのだ。

 

それにしても母の可愛いメッセージはロマンがあって素敵だなーと思う。

予想では普通に「ありがとう~」で終わるもんだと思っていたのに「サンタさんが来たのよ!」なんて粋なメッセージが来たもんだからこちらもとても嬉しくなったものだ。

もちろん母はサンタさんの正体を知っているからこそ私にLINEをくれたので大丈夫である。

いくら小学6年生にもなって信じていた私の母だからと言っても、流石に50を超えて本当のサンタさんがくれたと思ったわけではない。

そんな夢多き子供だった私も母の可愛いLINEにキュンとしたのは良い思い出だ。

 

そんな素敵なことをしておきながらサンタさんのことは頭からすっぽり抜けていたなんて不覚である。

クリスマスの朝起きるのが楽しみで仕方なかったあのピュアな子供心を無下にしてしまったりしたら悔やみきれない。

でもそれをすんでのところで思い出させてくれた子供達には感謝である。

 

まぁそんなこともあったが、クリスマスというものはウキウキする。

私にとって1年の中で一番好きな行事だし、クリスマスソングも素敵なものが沢山あるのも良い。

今年は感染症が流行っていて今も悠々とおでかけできるような状況では無いものの、クリスマスツリーやガーランドでデコレーションされたおうちの中でご馳走に舌鼓になりながら過ごす時間は尊いものだと私は思う。

大人だから落ち着きなさいよ、なんて言わずに子供のように楽しみはしゃぐのも良いだろう。

 

 

 

作成者 もし今でもサンタさんが何かをくれるというなら「体力」が欲しいあかね