とある日、海辺に遊びに行った時のことだ。
遠くの方から小さなおばあちゃんが大きな白い塊を連れて歩いてきた。
風の音も波の音も静かな広い海岸で、遠くにいてもおばあちゃんの声はよく聞こえる。
「いいかい、これ外すけど、絶対に走って行っちゃいけないよ!」
「ワンワン!」
なるほど、大きな白い塊はワンちゃんだったのだ。
小さなおばあちゃんが力負けしてしまいそうなほど大きなワンちゃんだが、きっと思い切り遊ばせてあげる為にここまで連れてきていたのだ。
ほっこりである。
そして、宣言通りリードは外された。
・・・と、その途端。
弾かれたように白い塊が、いや、白いワンちゃんが猛ダッシュで走り出したのだ!
あっ!という叫び声で振り向いた私が見た方向からは、おっきな白い塊が弾丸のようなスピードでこちらに向かってくる!!
「え!?えっ!?!?」
遠くにいたはずなのに、あっという間に距離を縮められた。
そして・・・
ぴょーーーーーん!!!
飛びつく寸前のなんとまぁ嬉しそうな顔。
そしてその後ろから必死に走って追いかけてくるおばあちゃんの姿。
何年も前の話だが、今でも忘れていない。
どちらも可愛かった。
ちなみにおばあちゃんはスピード的になかなかこちらに来れず。
私のところで尻尾をブンブン振り回して跳ね回って満足したワンちゃんがあっという間におばあちゃんのところへ戻っていった。
それにしても、砂場なのにグングンとスピードを上げて走ってくるあの爽快な走り。
流石である。
ただ、もしあんなに大きなワンちゃんにどすこーい!とタックルされていたら、いかに大柄な私でも吹っ飛んでいただろう。
しかしそのワンちゃんはすんでのところで勢いを殺し、お手手を私の胸の辺りまで上げてじゃれてきただけだった。
気遣いもできる賢い子だなぁと感心したものだ。
作成者 ひっくり返らないように、咄嗟にお相撲の張り手みたいなポーズで待ち構えていたあかね