初夢じゃないけど不思議な夢見た

寝ている時に見る夢は深層心理と密接な関係があるとか、良い夢は秘密にしておいて悪い夢は誰かに話すと良いなどと言われている。

 

ただ私の場合、良い夢はさほど見ない。とはいえ他が全て悪夢というわけではなく、なんだかよく分からない夢が多いのだ。そのうえストーリーがある程度構成されていて、小説の一部のような夢だったりする。

 

そうして目が覚めると大抵「続きが気になるな〜」と思いつつ、二度寝しても続きが見られないことがしばしば。

 

もしかしたら今まで見たことのある本やマンガに影響されて見た夢なのかもしれないが、どの作品に似ているとかはあまりピンと来ない。

 

ということで今回はタイトルまでわかっているとある夢の話をお送りする。

 

『九のお狐さま』

 

もののけが憑いているとされる少女を保護したとある陰陽師のお屋敷。


父と秀才の兄は依頼を受けては遠征して大きなもののけを討伐する日々。10にも満たぬ妹達は小さなもののけを祓い過ごしている。

 

その屋敷で奔放に駆け巡る少女がいた。
名は八重。

 

八重はもののけが引き寄せられる体質のようで、食われそうになっていたところを兄が拾ってきたそうな。

 

しかし当の八重はその時泣くでも喚くでもなく、ボウ・・・と立ち尽くしていたらしい。
恐ろしさのあまり身がすくんでいるのかと思ったところ、兄が人食いのもものけを祓った途端ニッコリと微笑んでみせたそうな。

 

屋敷に保護して以来、小さなもののけが八重を追って家に迫るようになったが、それらは妹達が全て祓っていた。

 

しかし、ある夜。

強大な気配に飛び起きた妹達が庭に出ると、八重が月を見ながら可笑しな格好をしていた。

まるで狐のような。

 

兄も妹達も、名の知れた陰陽師である父も八重に奇妙な気配など感じたことはなかった。
もののけが憑いているのかもしれないと分かったのはこの時だった。

 

兄も妹達も父でさえもただの人に見えていた。
だが目の前の八重はどう見ても人では無い。いや、人ではあるが狐と成ろうとしているように見える。

 

妹の一人が声をかけた。

「なぜもののけを避けないの?怖くないの?」

 

すると今まで「わからない」を繰り返していた八重がハッキリと答えた。

 

「九尾の姉様方にお迎えに来てもらうの」と。

 

それを聞いた一番上の妹が八重に言った。

「お前はもののけじゃない。そうした力もない。お前の言う九尾の姉様方のもとへ行ったとして、他のもののけ達に食われるのが関の山だ。」

 

そして2番目の妹が続ける。

もののけになりとうても、力持たず生まれて齢7つのお前が成るとしても数百年は後の話。
陰陽師となってそのもののけと対等になりとうても、力を迎えて我々も兄も父も超えねばならん。」

 

そして最後の妹が口を開いた。

「八重はどちらを選ぶの?」

 

すると少し考えるように俯き、そして答えた。

「どちらにも成る」

 

その時、最初に声をかけた妹が八重の瞳がまるで狐のように釣り上がるのを見た。

そして八重はフッと意識を失い、睡蓮の花が浮かぶ池の中へ沈んだのだ。

 

それから10日は目を覚さなかった八重だが、妹達が七草粥を持って部屋へ訪れた時、香りに促されるように目を覚ました。

 

「良いにおい」

部屋へと入ってきた妹の一人が持つ御膳を見て、嬉しそうな顔をして起き上がった。

「昨日集めてきたんだよ。本当は八重も一緒に来て欲しかったけど。」

「慣れないことしてずっと寝こけていたんだから仕方ないよ。」

妹達は次々と声をかける。

 

すると、それを聞いた八重はキョトンとした。

「慣れないこと?」

首を傾げる八重に、妹の一人が後ろから恐る恐る聞いた。

「眠る前のこと覚えてる?」

「うーん」と唸るようにして考え込む八重。
どうやらあまり覚えていないらしい。

 

「やっぱり・・・」とその妹が口を開きかけたが、他の妹達が口を押さえた。

「遊び疲れたんじゃないかな。八重はいつも走るのが好きだもの」

別の妹が七草粥を八重の前に置いてお盆を下げながら言う。

 

八重は目の前の粥に釘付けになっていたので、彼女達の会話は気にしていないようだ。

すると、縁側の方から声がした。

 

「屋敷の中を下手に動き回って結界も何もかもめちゃくちゃにされたら敵わんな。父様はまだ山の向こうに行っているし、私も帰って来れぬ日も多い。」

どうやら青年の声だ。

 

それを聞いた妹達は一斉に背筋を伸ばして声のする方へ手をつき、頭を下げた。

「兄様。おかえりなさいませ」

揃って挨拶をする。

 

八重も慌てて同じようにしようと立ち上がって向き直ったが、急に目の前が暗転して倒れ込む。

あやうく湯気の立つ粥に手をつきそうになったが、近くにいた妹に体を支えられた。

 

「良い。まだ寝起きだろう。妹達が作った粥でも食って、温まりなさい。」

いつもならもう少し鋭い言葉をかける兄だったが、八重の身を案じているのだろう。

 

妹達はそれを聞いて再び八重に向き直り、粥の前にと白湯を口に運ばせた。

白い息が漏れて、八重の鼻の辺りが赤くなる。

冬の寒い日に池に飛び込んだりすれば風邪を引くのは当たり前である。

 

それにしても、と妹の一人が10日ほど前のことを思い出していた。

 

八重が立っていた池の水面。
正確には浮かんでいた、というのだろうか。
足元には紫色の睡蓮が花を開かせていてよく分からなかったが、明らかに人の為せる技ではなかった。

 

冬に咲く睡蓮。
凍っていたはずの池。
狐のような格好をしてたたずむ彼女。

 

今の八重にはそんな力を感じない。あの日だけだ。

 

この子は一体なんだろう。

 

初めて会った時からすでに1年は過ぎようとしているというのに、未だに彼女の身の上がわからない。

 

ただ、初めて会った時に彼女の着る着物の袖から真っ白い毛が落ちてきたのを一番上の妹が拾い上げて父に見せたのだ。それを受け取った父は「これは面白いものを」と面白がって言いつつも、それを厳重に仕舞い込んでいた。

 

それについてはその後何も教えてもらえなかったが、あの白い毛はただ面白いものというだけではなく八重の過去を知るのに重要な物なのかもしれない。

 

それにしてもあの夜八重が言った「九尾の姉様方」だが、それはおかしな話だ。その言い方ではまるで九尾の狐が沢山いることになってしまう。

 

昔からこの辺りでも九尾の狐を幾度も目撃されていたが、それは全て同じもののけだとされている。奴は悪戯好きではあるが困らせるような悪さはしないので基本的には放っておいている。お稲荷様を祀る神社の辺りを守っているのもあって、村によっては神様として崇められていることもあるからだ。

 

そしてただの狐がもののけに成るのは簡単なことでは無い。条件が揃った狐は数百年に一匹いるかいないかだし、九尾と成るのはその中でもさらに少ない。それが同じ場所で9体も同時に成ったとは考え辛いのだ。

 

同時に存在するとすれば、遠くの地にて九尾の狐と成ったものがいるということくらいだろう。しかしその九尾が故郷の地を離れてわざわざこちらの山へ来ることも考えられない。なぜなら奴は土地に憑くもののけなのだ。自分が憑いている地を離れれば力が失われる。

 

いくら長い年月を生きているとしても力の源が遠くなればなるほど元の狐と成り下がる。しかもそれはつまり本来の生の時間も再び動き出すということ。つまりこちらに辿り着く前に命尽きるはずなのだ。

 

「姉様」

 

八重の呟くような声がした。
そちらに顔を向けると、満腹になりいつのまにか寝てしまった八重の世話を他の妹達がしている。

 

粥を片付けたり掛け布団を直している妹に混じって自分も慌てて八重の髪を整えた。

 

すると、、、。

 


夢はここで終わりだ。
ここまで見た直後に私は目が覚めた。

 

九尾の姉様方と八重の関係ってなんだろう?
髪を整えた妹が何かを発見したようだが、それが何なのかまでは見られなかった。

 

見た本人である私ですら分からないまま終わってしまったが、不思議な話だったな〜と思いながらお正月3日目の朝を迎えたわけだ。

 

ちなみに「九尾の狐」は昔からいる妖怪で、色んな漫画にも出てくる王道の妖怪だ。しかし私の夢に出てきた九尾の狐に関しての情報はしっかり調べたものではないのでたぶん適当だ。夢を見た本人だけれどそこらへんの責任は取れない。

 

それとストーリーも矛盾があったり辻褄が合わないのが夢の基本である。今回の話も実際はもっと変な設定が色々あったけどそれは省略させていただいた。だって兄が唐沢寿明になったり「鬼滅の刃」に出てくる鬼の猗窩座になったりする、などと言われても困るだろう。

 

あと夢を見ている本人の私の立ち位置はあくまでもストーリーに絡まない第三者なのだが、なぜか妹達に七草粥を運んできてもらって食べたりもした。一口食べてみたが、あまり美味しくないというかなんか石鹸の味がした。

しかし現実で七草粥を食べたことがないので、これじゃあとんだ風評被害になってしまうなぁ〜と思ってあえて言わなかった。ここで言っちゃったけど皆さんは信じないように。

 

とまぁ本当はもっとカオスだったりもするが、そんな夢見たんだな〜くらいに捉えておいてほしい。

 

 

 

作成者 北海道稚内市宗谷丘陵にて野生の小狐兄弟?を発見し、急いで車に避難したビビりのあかね