私が電車の椅子に座らなくなった理由

いつだったか、電車の中で出会った少年。

彼は私の選択を変えたのだ。

               あかね

 

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電車には椅子がある。

長時間乗る時はもちろん、たった1駅でもなんとなく座ってしまうクセがついていた。

 

ある日、私の隣には制服を着た小学生の男の子が座っていた。学校帰りだろう。

大きなランドセルを背負ったままチョコンと座り、足をブラブラさせている。

 

他にも多くの乗客がいた。

普段と変わらない光景だ。

 

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私はそう思っていた。

この時までは。

 

しかし少年は何を思ったのか

おもむろに鼻に指を突っ込んだのだ。

 

私は戦慄した。

こんなに人がいる前で堂々と何をしているのだ、この少年は。

 

そんな虚空を見つめながら真剣な眼差しで。

やめてくれ。

 

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そんな事を思っていたら、彼を見ていることがバレてしまったようだ。

 

彼は視線をこちらに向け、私の方を見ながら

今度は鼻をほじり始めた。

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驚きすぎて息が止まった。

 

何故!?
私を見つめながら?!?

 

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これでもう十分だ。

もういい。

 

そんなことはしなくていい。

というかしてはいけないのだ。

 

だがその後更なる悲劇が訪れた。

 

彼は その指を 椅子に付けたのだ。

 

というか拭いている。

私と彼の中間地点に。

 

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私は固まってしまった。

 

これは金縛りの一種だろうか。動けない。

でも避けたい。逃げたい。

 

恐ろしさのあまり、泣きそうになった。

こんなことが起きるなんて思いもしなかった。

 

どうしたらいいのか分からず私はひたすら固まっていたが、

降りる駅に着いてハッと我に帰った。

急いで電車を降りよう・・・!


そそくさと席を立ち、ドアの前に立った。

これでとりあえず大丈夫だ。

 

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駅のホームが見えた。やっと解放されたのだ。

 

安心して少し目線を落とした時、ガラス窓に写っていた。

 

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ーー私の真後ろに立つ彼が。

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作成者 ティッシュを渡してあげれば良かったかもしれないと後悔したあかね