『すりすり ももんちゃん』を読んで泣いた

※『ももんちゃんあそぼう』シリーズのお話のネタバレあり。

 

ほんわかした優しいタッチのももんちゃんあそぼうシリーズ。代表作の『どんどこ ももんちゃん』他多数の作品が出ている人気の絵本である。

大の大人である私はちょくちょくちいちゃい子にまぎれて絵本コーナーを物色しているのだが、そこで見つけたのが「どんどこ ももんちゃん」である。

 

初めて見た時はオムツ一丁で桃のようなキュートな見た目にキュンとなると同時に「なんてあざといんだ」と思いつつ、気がついたらレジで財布の紐を緩めていた。

あざとい=計算高い腹黒という偏見を持った偏屈な私ではあるが、今回はそのあざとさに負けたのである。だってオムツ一丁で勇敢な表情をして意気揚々と歩く幼子なんて可愛い以外のなにものでもないじゃないか。

そんなももんちゃんの絵本の内容は至ってシンプル。タイトルから連想したらもうそのまんま、といった感じだ。シリーズ全ては読んでいないがたぶん話の方向性は似た感じであろう。

 

そして先日新たに『すりすり ももんちゃん』を購入。きっと色んな動物とすりすり頬擦りでもするお話だろうから可愛いだろうなー。全くあざとい奴め!などと思っていたのだが、予想外なことが。

まず、ネコさんやらイヌさんが出てきてももんちゃんにすりすり。ふむふむ、可愛いもの同士を掛け合わせるのは王道だが可愛いなぁなどと思いながら読み進める。

しかし突然出てきたのはなんとサボテン。「突然どうした!?」と思わざるを得ない異質なキャラクター登場である。

ラーメン屋さんから「塩ラーメン一丁!醤油ラーメン一丁!あと、オムライス一丁!」って聞こえてきた感じの異質さである。動物→動物と来て何故か→植物に移行する流れ。なんでそこでサボテン?と疑問に思ったと同時にその後の展開を悟った。

 

可愛いももんちゃんとすりすりしたくて二足歩行ができるように進化し顔面まで生成されたサボテンさん。でもサボテンといえばトゲ。すりすりしたらそりゃ痛い。ももんちゃんはやっぱりそこで泣いてしまうのだ。

でも・・サボテンさんはきっと心が痛い。ももんちゃんに大好きを伝える為に来たのに自分の体のせいで痛がらせてしまったのだ。申し訳なさとやるせなさで傷ついたことだろう。現に次のコマでは哀愁ただようサボテンさんが去っていく姿がある。

私がサボテンさんだったらこの状況は悲しい。「なんで自分はサボテンに生まれてしまったんだ。」「どうしてトゲなんて生えてるんだ。」とか悲壮感と罪悪感でいっぱいになりそうである。

好きな人に触れられない悲しさ。そして自分を変えることができない苦悩・・なんて言うとまるで恋愛トラブルかなんかみたいだが、とにかくトゲが生えたサボテンボディである限りはももんちゃんには近づけないのだ。そんな自分の体を呪ってしまいそうである。

「これならいっそ、自我なんて芽生えなければ良かったのにっっ・・・!!」とまぁ、およそ子供向け絵本とは程遠い展開を妄想してしまうほど悲しい。

 

その後の話の流れとしては泣いてしまったももんちゃんがおかあさんのもとに駆け寄っていって慰めてもらうのだが、ももんちゃんの可愛さとか一生懸命さよりもとにかく・・・

サボテンさんが可哀想!

だからといってトゲを引っこ抜いてツンツルテンにして、改めてすりすりして良かったね♡なんて展開はちょっと違うし。というかそこまでしたら狂気を感じる。バットマンに出てくるジョーカーみたいなことをするキャラクターが登場する絵本なんてイヤである。そんなことになったらほんわかシーンからの急転直下って感じだ。

 

せめてすりすりできなくてもももんちゃんはサボテンさんのこと好きだよ!的な部分があれば良かったんだがなぁと思う。だって、別にサボテンさんは悪くないのだ。たまたまトゲトゲな体で生まれたけれど、サボテンさんだってぷりぷりのももんちゃんに触れてみたいだろう。

しかしそれは叶わぬ夢。他の動物さん達がももんちゃんとスキンシップをとっているのを羨ましげに遠巻きに見ながら「トゲ刺さっちゃってごめんね」なんて心の中で思っているに違いない。なんて考えてしまって泣いたのである。

よもや子供の絵本でこうも心が傷つくとは思わなかった。よもやよもやである。

もしかしてこの絵本は「悪気がなくても他人を傷つける可能性について」とか「致し方ない理由によって親愛の情が伝わらない世の中の不条理」とかを考えさせる目的があって作られたんだろうか。

それって切ない。

 

この絵本はただただももんちゃんが可愛くて、動物さんたちとニコニコすりすりして、泣いちゃったらママのところに走っていって、ギュッと抱きしめてもらって「良かったね♡」で終わる。

・・・だけで済むか!

サボテンさんはどうなるんじゃい!!

と、斜め上の感想を持って読み終えたが、赤ちゃんが読むものなのでまぁもっとシンプルに考えていいのかなぁなどとも思った。

 

でもやっぱりサボテンさん可哀想なので今度サボテン買いに行って来ます。

すりすりはできないけど。(薄情)

 

 

 

作成者 父にサボテンを預けたら倍の数の鉢植になって返ってきて困ったあかね

 

うちの父は栽培上手。